「ある私的な意見を認める者はそれを意見と呼び、嫌う者はそれを異端と呼ぶ。しかし異端とは、私的意見にほかならない」

- 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
- イングランド出身
- 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者
英文
”They that approve a private opinion, call it opinion; but they that dislike it, heresy; and yet heresy signifies no more than private opinion.”
日本語訳
「ある私的な意見を認める者はそれを意見と呼び、嫌う者はそれを異端と呼ぶ。しかし異端とは、私的意見にほかならない」
解説
この言葉は、ホッブズの宗教的・思想的寛容に関する批判的洞察を示している。彼は、同じ内容の意見でも、支持する者にとっては単なる「意見」であり、反対する者にとっては「異端」とされると指摘する。すなわち、異端という烙印は本質的な意味を持たず、権力や立場によって決まる相対的なものだと論じているのである。
この考えは、宗教戦争が続いていた17世紀ヨーロッパの状況と密接に関わる。カトリックとプロテスタントが互いに相手を異端と断じ合う中で、ホッブズは「異端」という概念そのものの恣意性を暴き出した。これは、信仰や思想を絶対的基準で裁くのではなく、政治的力学や人間の感情によるラベリングとして捉える冷徹な現実認識であった。
現代社会においても、この指摘は普遍的である。政治的立場や社会的常識に合わない意見は「過激」「陰謀論」と呼ばれる一方で、賛同者には「新しい視点」として受け入れられる。ホッブズの言葉は、意見の価値は絶対的な真理ではなく、社会的文脈や権威の評価によって変わることを明らかにし、批判的思考の重要性を教えているのである。
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