「我々が生きている限り、精神の永続的な安らぎというものは存在しない。なぜなら生命そのものが運動であり、感覚なしに存在できないのと同じく、欲望や恐れなしに存在することもできないからである」

トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
  • 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
  • イングランド出身
  • 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者

英文

”There is no such thing as perpetual tranquillity of mind while we live here; because life itself is but motion, and can never be without desire, nor without fear, no more than without sense.”

日本語訳

「我々が生きている限り、精神の永続的な安らぎというものは存在しない。なぜなら生命そのものが運動であり、感覚なしに存在できないのと同じく、欲望や恐れなしに存在することもできないからである」

解説

この言葉は、ホッブズの人間存在に関する機械論的理解を反映している。彼にとって生命とは静止ではなく絶え間ない運動であり、その運動に伴って欲望と恐れが必然的に生じる。したがって、完全な心の静けさを求めても、それは生の性質そのものに反するため不可能であると論じている。

この思想は、17世紀の自然科学的世界観の影響を受けている。ホッブズは、人間を自然法則に従う存在として捉え、精神活動もまた物理的運動に還元できると考えた。宗教的に「魂の平安」が語られる時代にあって、彼はむしろ生きること自体が欲望と恐怖の往復であるという冷徹な現実を強調したのである。

現代においても、この視点は示唆的である。心理学や神経科学の研究は、人間の心が常に欲望と不安によって動かされていることを裏付けている。ホッブズの言葉は、完全な静けさを理想として追い求めるのではなく、欲望と恐怖を前提にしたうえで、いかにバランスを保つかを考えることの重要性を教えているのである。

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