「古代の著者たちが称賛されるのは、死者への敬意からではなく、生者同士の競争と相互の嫉妬から生じるのである」

トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
  • 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
  • イングランド出身
  • 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者

英文

”The praise of ancient authors proceeds not from the reverence of the dead, but from the competition and mutual envy of the living.”

日本語訳

「古代の著者たちが称賛されるのは、死者への敬意からではなく、生者同士の競争と相互の嫉妬から生じるのである」

解説

この言葉は、ホッブズが古典崇拝の動機を批判的に捉えたものとして重要である。彼は、古代の思想家や作家が高く評価されるのは純粋な尊敬心からではなく、むしろ現代の学者や知識人が互いに競い合い、相手を抑えるために古典を権威として利用するからだと論じた。すなわち、古典への称賛は知的伝統の継承というよりも、生者同士の権力闘争の手段である。

この見解は、ルネサンス以降の学問的風潮に対する批判である。17世紀の知識人は古代ギリシア・ローマの著作を権威視し、議論の正統性を担保するためにしばしば引用した。ホッブズはその実態を冷静に観察し、古典の称賛は学問的真理の探究ではなく、虚栄や嫉妬心の産物であると喝破したのである。

現代においても、この言葉は示唆的である。学問や文化における「権威の引用」がしばしば真理よりも権威争奪の道具となることは少なくない。ホッブズの指摘は、権威を疑い、生者の競争や心理を見抜く批判的視点を持つことの重要性を教えているのである。

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