「臣民の君主に対する義務は、君主が彼らを保護する力を持つ限りにおいて存続し、それ以上には及ばないと理解される」

トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
  • 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
  • イングランド出身
  • 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者

英文

”The obligation of subjects to the sovereign is understood to last as long, and no longer, than the power lasteth by which he is able to protect them.”

日本語訳

「臣民の君主に対する義務は、君主が彼らを保護する力を持つ限りにおいて存続し、それ以上には及ばないと理解される」

解説

この言葉は、ホッブズの社会契約と主権の条件を示している。臣民が君主に従う義務は無制限ではなく、君主が保護を提供する能力を持つ限りに限定される。もし君主がその力を失えば、臣民の服従義務もまた消滅する。ここでホッブズは、主権と服従の関係を契約的・相互的なものとして捉えている。

この考え方は、絶対主義を支持しながらも単なる専制を正当化するものではなかった。イングランド内戦という混乱の中で、ホッブズは秩序維持のために強力な主権を必要としたが、同時に君主がその役割を果たせなくなれば、臣民はもはや拘束されないと認めた。これは、彼の現実主義的かつ合理的な視点を反映している。

現代においても、この言葉は国家と国民の関係を考える上で重要である。国家の正統性は、安全や権利の保護という機能を果たすことによって維持される。もし国家がその役割を放棄すれば、市民はその権威を受け入れる必要がない。ホッブズの言葉は、権力の正当性が単なる支配ではなく、保護という責務の遂行に依存することを鋭く指摘しているのである。

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