「笑いとは、他者の弱さやかつての自分と比較して、自分に何らかの優越を突然に思い描くときに生じる、突発的な優越感にほかならない」

トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
  • 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
  • イングランド出身
  • 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者

英文

”Laughter is nothing else but sudden glory arising from some sudden conception of some eminency in ourselves, by comparison with the infirmity of others, or with our own formerly.”

日本語訳

「笑いとは、他者の弱さやかつての自分と比較して、自分に何らかの優越を突然に思い描くときに生じる、突発的な優越感にほかならない」

解説

この言葉は、ホッブズが笑いの本質を心理的な優越感に求めたことを示している。彼によれば、人は他者の失敗や欠点、あるいは過去の自分の未熟さを認識し、それに対して自分が優れていると感じたときに笑いが生まれる。つまり、笑いは単なる楽しみではなく、優越意識の表出だとする独特の定義である。

この見解は、17世紀の合理主義的な人間観の一端をなす。ホッブズは人間の感情を理性的に分析し、宗教的・道徳的に美化されがちな「笑い」さえも、欲望や競争心に根ざす感情として説明した。ここには、人間の行動を本能と合理性の観点から解明しようとする彼の唯物論的立場が反映されている。

現代においても、この洞察は心理学的に意義を持つ。ユーモア研究では、他者を笑う「優越理論」が一つの重要な位置を占めている。例えば、コメディの多くは登場人物の失敗や弱点に基づいて笑いを誘う。ホッブズの言葉は、笑いを人間関係の力学や自己意識と結びつけることで、笑いの裏に潜む心理的メカニズムを鮮明に示しているのである。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「トマス・ホッブズ」の前後の名言へ


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る