「法律を作るのは知恵ではなく権威である」

- 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
- イングランド出身
- 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者
英文
”It is not wisdom but Authority that makes a law.”
日本語訳
「法律を作るのは知恵ではなく権威である」
解説
この言葉は、ホッブズが『リヴァイアサン』で展開した法と権力の本質を端的に表現している。彼にとって、法とは人間の理性や普遍的な正義から生まれるものではなく、統治者の権威によって制定される規則であった。知恵や真理があっても、それを実行し強制する権威がなければ、法として社会を拘束する力を持たないのである。
この考えは、イングランド内戦という無秩序の時代背景と深く結びついている。ホッブズは、分裂した宗教や政治勢力がそれぞれ「正義」や「真理」を掲げて争った結果、国家が混乱し内戦が起こる現実を見た。そこで彼は、秩序を維持するには絶対的な権威を持つ主権者が必要だと主張したのである。法は理想的な正義よりも、まず安定と統一を保証する力に依存するというのが彼の現実主義であった。
現代においても、この言葉は示唆に富む。理性的に正しい政策や倫理的に望ましい規範があっても、権威ある制度や統治機構によって法制化されなければ実効性を持たない。例えば環境問題や人権保障に関する理念が広く認められても、それを法として定める政治的権威がなければ社会に浸透しない。ホッブズの言葉は、法の正統性が知恵だけでなく権力の支えを必要とするという現実を突きつけているのである。
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