「戦争においては、武力と詐術が二つの主要な徳である」

- 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
- イングランド出身
- 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者
英文
”Force and fraud are in war the two cardinal virtues.”
日本語訳
「戦争においては、武力と詐術が二つの主要な徳である」
解説
この言葉は、ホッブズの戦争観と現実主義を端的に表している。通常、徳は道徳的に称賛される性質を意味するが、戦争という特殊な状況においては、力による支配と欺きによる戦略こそが勝利を決する徳とみなされる。ホッブズは、道徳の基準も状況によって変化することを示唆しているのである。
この発想は、彼が経験したイングランド内戦の混乱と深く結びつく。秩序が崩壊した社会では、正義や信義は二の次となり、生存と勝利のためには力と策略が不可欠となる。ホッブズはこの現実を冷徹に観察し、そこから強力な主権者の必要性を説いた。戦争の「徳」とは、平時の徳とは異なり、あくまで生存と勝利に資する手段であった。
現代でも、この言葉は軍事戦略や国際関係の現実を照らし出している。外交や戦略において、武力の行使と情報操作は依然として主要な手段である。倫理的には否定されがちなこれらの要素が、戦争においては「徳」とされるという逆説は、ホッブズが指摘したように人間社会の権力構造の根底にある現実である。
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