「目に見えぬものへの恐れは、人が自らの内に宗教と呼ぶものの自然な種である」

トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
  • 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
  • イングランド出身
  • 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者

英文

”Fear of things invisible in the natural seed of that which everyone in himself calleth religion.”

日本語訳

「目に見えぬものへの恐れは、人が自らの内に宗教と呼ぶものの自然な種である」

解説

この言葉は、ホッブズの代表作『リヴァイアサン』に見られる思想を反映している。彼は人間が自然に抱く恐れや不安が、宗教の起源に深く関わると考えた。特に、見えないものや不可知なものへの恐怖が、人々に超自然的存在や神々を想定させたのである。つまり宗教は、人間が世界を理解し、恐怖を制御しようとする心理から生まれると論じた。

この思想は17世紀のヨーロッパにおける宗教戦争や混乱を背景にしている。当時、カトリックとプロテスタントの対立は激しく、宗教が人々の恐れや権力闘争の源となっていた。ホッブズはその現実を冷徹に観察し、宗教の根本に潜む心理的基盤を明らかにしようとしたのである。

現代においても、この洞察は有効である。未知の病気、環境危機、人工知能のように理解が及ばぬ事象に直面したとき、人は恐怖を宗教的・超自然的な枠組みで解釈しようとする傾向を持つ。ホッブズの言葉は、宗教を単なる信仰対象としてではなく、人間の本能的な恐怖に根ざした文化的現象として理解する重要性を示しているのである。

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