「人々を畏怖させる共通の権力が存在しないとき、人々は戦争と呼ばれる状態にある。そしてその戦争とは、まさに万人の万人に対する戦いである」

トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
トマス・ホッブズ(画像はイメージです)
  • 1588年4月5日~1679年12月4日(91歳没)
  • イングランド出身
  • 哲学者、政治思想家、社会契約論の提唱者

英文

”During the time men live without a common power to keep them all in awe, they are in that conditions called war; and such a war, as if of every man, against every man.”

日本語訳

「人々を畏怖させる共通の権力が存在しないとき、人々は戦争と呼ばれる状態にある。そしてその戦争とは、まさに万人の万人に対する戦いである」

解説

この言葉は、ホッブズが『リヴァイアサン』で展開した自然状態の概念を示している。共通の権威が欠如した社会では、人間は互いに信頼できず、自己保存のために他者と絶えず争う状況に陥る。ホッブズはこの状態を「万人の万人に対する戦争」と呼び、秩序なき人間社会の本質を描写した。

この思想は、イングランド内戦という実体験を背景にしている。宗教や政治の権威が分裂し、国が無政府状態に近づいたとき、人々は理念や正義よりも生存と権力の確保を優先した。ホッブズはその混乱を自然状態のモデルと見なし、そこから強大な主権者による統治の必要性を導き出したのである。

現代においても、この視点は重要である。国際関係では、各国を統制する共通の権力が存在しないため、依然として国家間の自然状態が続いていると解釈できる。軍備拡張や安全保障の競争はその表れである。ホッブズの言葉は、秩序を維持するための権威や制度の必要性を強調し、人間社会の不安定さを直視させるものである。

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