「民族主義とは、異なる民族の人々を差別することを意味するのではない。我々がそうした人々に政治権力を奪われることを許さないということであり、漢民族が政治的に主導権を握ってはじめて国家が成り立つのだ」

- 1866年11月12日~1925年3月12日(58歳没)
- 中国(清国)出身
- 革命家、政治家、中華民国臨時大総統
英文
”We should recognize that nationalism does not mean discriminating against people of a different nationality. It simply means not allowing such people to seize our political power, for only when we Han are in control politically do we have a nation.”
日本語訳
「民族主義とは、異なる民族の人々を差別することを意味するのではない。我々がそうした人々に政治権力を奪われることを許さないということであり、漢民族が政治的に主導権を握ってはじめて国家が成り立つのだ」
解説
この言葉は、民族主義の定義と政治権力の帰属に関する孫文の立場を示している。彼は清朝の満州族支配を打破し、漢民族による政治的自己決定を回復することを革命の目的のひとつとして掲げていた。ここでの「民族主義」は排外主義ではなく、被支配民族からの脱却と、政治的主体性の回復を意味するものである。
一方で、この主張は政治的統合と民族的排他性の境界線が曖昧になりかねない危険も孕んでいた。孫文自身は後に「五族共和」という理念を掲げ、満族・モンゴル族・回族・チベット族との共存を模索するが、初期の段階では民族的優位性の論調が見られる。この言葉は、その過渡的な思想状況を反映している。
現代においては、多民族国家における政治的主導権の問題と、包摂的なナショナリズムのあり方が依然として議論されている。国家統一と民族自決の両立には、支配・被支配という構造の克服と、全民族の平等な参加を保障する制度設計が求められる。孫文のこの発言は、歴史的文脈に根ざした政治的主張であると同時に、ナショナリズムの限界と可能性を考える手がかりとなる。
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