「中国の民衆には家族と宗族の意識しかなく、国民精神が存在しない。その結果、四億の人々が一つの中国に集まっていながら、実際には我々はただの“散り散りの砂”にすぎない」

- 1866年11月12日~1925年3月12日(58歳没)
- 中国(清国)出身
- 革命家、政治家、中華民国臨時大総統
英文
”The Chinese people have only family and clan groups; there is no national spirit. Consequently, in spite of four hundred million people gathered together in one China, we are, in fact, but a sheet of loose sand.”
日本語訳
「中国の民衆には家族と宗族の意識しかなく、国民精神が存在しない。その結果、四億の人々が一つの中国に集まっていながら、実際には我々はただの“散り散りの砂”にすぎない」
解説
この言葉は、孫文が中国の社会構造の根本的弱点として捉えた「国民意識の欠如」を鋭く表現したものである。彼は、中国が封建制度の長い歴史の中で血縁や地域共同体を基盤とした結びつきにとどまり、国家全体を一体とする共通の意識=国民精神が育っていないことを問題視した。
「散り散りの砂(a sheet of loose sand)」という比喩は、外見的には統一国家に見えても、内実はバラバラで協調性に乏しく、統率も困難な状態を意味する。この状態では、国家としての自立も、外国からの侵略に対する抵抗も難しく、国民全体が一致団結するための精神的な基盤が必要であるというのが孫文の主張であった。
この認識のもと、彼は「民族主義」や「民権主義」によって、地域や血縁を超えた「国民」という新たな集団意識を創出し、国家の近代的再建を目指した。現代においても、国家形成や市民社会の成熟において、共通の価値観や帰属意識の醸成が不可欠であることは変わらない。孫文のこの言葉は、数の集合ではなく、精神の統合こそが国家の力の根源であるという普遍的な真理を示している。
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