「古代においては、農業も工業も完全に人力に依存していた。しかし今では、人力では及ばない自然の力の発展により、農業も工業も完全に資本家の手中に落ちた。資本が多ければ多いほど、利用できる資源も豊富になる」

孫文(画像はイメージです)
孫文(画像はイメージです)
  • 1866年11月12日~1925年3月12日(58歳没)
  • 中国(清国)出身
  • 革命家、政治家、中華民国臨時大総統

英文

”In antiquity, agriculture and industry depended completely on human labor; but now, with the development of natural forces that human labor cannot match, agriculture and industry have fallen completely into the hands of the capitalists. The greater the amount of capital, the more abundant the resources that can be utilized.”

日本語訳

「古代においては、農業も工業も完全に人力に依存していた。しかし今では、人力では及ばない自然の力の発展により、農業も工業も完全に資本家の手中に落ちた。資本が多ければ多いほど、利用できる資源も豊富になる」

解説

この言葉は、産業革命以後の資本集中と労働の非対称性についての鋭い認識を示している。孫文は、近代社会において農業や工業の主導権が、労働者ではなく資本を有する者に移ってしまった現実を批判的に捉えている。技術や機械の発達によって生産性は飛躍的に向上したが、その恩恵は広く分配されず、むしろ資本家による支配が強化されたという構造的問題が浮き彫りにされている。

ここには、孫文の「民生主義」に通じる思想が見られる。彼は、経済的平等を重視し、資本と労働の健全な関係を模索していた。単に資本家を否定するのではなく、資本の力を公的福祉や国民経済全体に還元する仕組みづくりを目指した。したがって、資本の集中を認識しつつ、それをどう民主的に管理・運用するかが課題となる。

現代でも、技術革新が進む一方で、資本とデータを持つ企業が富を独占する傾向が強まっている。この構造に対抗するためのベーシックインカム論や、労働者協同組合の試みなどは、孫文の問題意識と共鳴する。彼の言葉は、近代の資本主義の矛盾を捉え、それを乗り越える社会構想を促す思想的出発点である。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「孫文」の前後の名言へ


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る