「長年にわたり、私がロジャー・ペンローズと共に行った初期の研究は、科学にとって災難のように思えました。それは、アインシュタインの一般相対性理論が正しいとすれば、宇宙は特異点から始まらなければならないことを示していました。これは、科学が宇宙の始まりを予測できないことを意味するように思われたのです」
![スティーヴン・ホーキング](https://note.lv73.net/wp-content/uploads/2024/11/Stephen_hawking_2008_nasa_cropped-512.webp)
- 1942年1月8日~2018年3月14日
- イギリス出身
- 理論物理学者、サイエンス・ライター
- ブラックホールの特異点定理やホーキング放射を発表し、また著作『宇宙を語る』などで科学の普及に貢献した
英文
“For years, my early work with Roger Penrose seemed to be a disaster for science. It showed that the universe must have begun with a singularity, if Einstein’s general theory of relativity is correct. That appeared to indicate that science could not predict how the universe would begin.”
日本語訳
「長年にわたり、私がロジャー・ペンローズと共に行った初期の研究は、科学にとって災難のように思えました。それは、アインシュタインの一般相対性理論が正しいとすれば、宇宙は特異点から始まらなければならないことを示していました。これは、科学が宇宙の始まりを予測できないことを意味するように思われたのです」
解説
この発言は、スティーヴン・ホーキングが宇宙の起源に関する特異点定理とその科学的意義について述べたものである。ホーキングとロジャー・ペンローズの研究は、アインシュタインの一般相対性理論に基づき、宇宙が時間と空間の始まりとなる特異点(無限の密度と曲率を持つ点)から誕生した可能性を示した。この結論は当時、科学的な予測可能性の限界を示すものとして受け取られた。
特異点定理が示唆したのは、科学が宇宙の始まりを説明するための道具を失ってしまう可能性である。特異点では物理法則が破綻し、一般相対性理論だけではその状態を記述することができない。このため、宇宙の起源に関する問いが科学の領域を超え、哲学や宗教の議論に委ねられるのではないかという懸念が生じた。
しかし、この研究は「災難」で終わることなく、むしろ科学の新たな探究の扉を開いた。特異点の問題を解決するためには、量子力学と一般相対性理論を統合する新しい理論(量子重力理論)が必要であることが明らかになった。この視点は、後のホーキングの研究、特にブラックホールや宇宙の無境界仮説の提唱において重要な役割を果たした。
この発言は、科学が困難や限界に直面したとき、それを克服し、新しい発見や理論を生み出す力を持つことを示している。ホーキングの特異点定理は、宇宙の起源についての根本的な問いを深めると同時に、科学の進歩に大きく貢献した重要な成果である。
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