「数年前、イタリアのモンツァ市議会は、金魚鉢の中で金魚を飼うことを禁止しました。理由は、湾曲した側面の金魚鉢の中では、外を見る金魚が現実を歪んで見ることになり、それは残酷だというものでした。しかし、私たちが見ている現実が歪んでいない、真実の姿だとどうしてわかるのでしょうか?」
- 1942年1月8日~2018年3月14日
- イギリス出身
- 理論物理学者、サイエンス・ライター
- ブラックホールの特異点定理やホーキング放射を発表し、また著作『宇宙を語る』などで科学の普及に貢献した
英文
“A few years ago, the city council of Monza, Italy, barred pet owners from keeping goldfish in curved bowls… saying that it is cruel to keep a fish in a bowl with curved sides because, gazing out, the fish would have a distorted view of reality. But how do we know we have the true, undistorted picture of reality?”
日本語訳
「数年前、イタリアのモンツァ市議会は、金魚鉢の中で金魚を飼うことを禁止しました。理由は、湾曲した側面の金魚鉢の中では、外を見る金魚が現実を歪んで見ることになり、それは残酷だというものでした。しかし、私たちが見ている現実が歪んでいない、真実の姿だとどうしてわかるのでしょうか?」
解説
この発言は、スティーヴン・ホーキングが現実の認識の限界について問いかける中で述べたものである。彼は金魚鉢の例を通じて、観察者の視点が現実をどのように形作るかについて考察している。このエピソードは、単なるユーモラスな逸話に留まらず、現実そのものが観察者の立場や環境に依存する可能性を示唆している。
物理学的には、この問いはアインシュタインの相対性理論や量子力学と深く関連している。例えば、観測者の速度や重力場の影響で、時間や空間が異なるように認識される相対性理論は、現実が一つの固定された形ではなく、観測条件によって異なる可能性を示している。また、量子力学における観測者効果は、観察そのものが現実に影響を与えることを示唆している。
さらに、この発言は哲学的にも深い意味を持つ。「私たちが見る現実が歪んでいない」という保証はなく、観測手段や認知能力に依存している可能性がある。これは、現実の本質を知ることがいかに難しいかを浮き彫りにし、科学や哲学における継続的な探究の重要性を強調している。
ホーキングのこの言葉は、科学の基本的な姿勢である「謙虚さ」を表している。つまり、私たちが知ることができる現実は限られており、それを理解するために常に新しい視点や方法を探す必要があるということだ。この発言は、科学的探究心を喚起するとともに、現実の多様な側面を考えるきっかけを提供している。
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