「ある出来事によって苦しめられた人々は、それを思い出させられると、他のあらゆる喜び――物語を読むことから得られる喜びでさえ――を麻痺させる恐怖に襲われる」

- 1783年1月23日~1842年3月23日(59歳没)
- フランス出身
- 小説家、評論家
英文
”People who have been made to suffer by certain things cannot be reminded of them without a horror which paralyses every other pleasure, even that to be found in reading a story”
日本語訳
「ある出来事によって苦しめられた人々は、それを思い出させられると、他のあらゆる喜び――物語を読むことから得られる喜びでさえ――を麻痺させる恐怖に襲われる」
解説
この言葉は、過去の深い苦しみやトラウマが、人の感情全体に及ぼす圧倒的な影響を描いている。過去の出来事が心に刻んだ痛みは、それに触れるどんな些細なきっかけでも再び蘇り、他の感情や楽しみを一瞬で奪い去るほど強力であるとスタンダールは述べている。ここでは、読書という比較的安全で静かな娯楽すら、その恐怖に打ち消されてしまうという極端な例が挙げられている。
この発想の背景には、19世紀ヨーロッパ文学における心理描写の深化がある。スタンダールは恋愛や野心だけでなく、人間が心の奥底に抱える傷やその再発の瞬間にも強い関心を寄せていた。この言葉は、心の痛みが「記憶」ではなく「現在の感覚」として再体験されるという、後に心理学でトラウマ反応と呼ばれる現象を先取りして描いている。
現代においても、この考えは非常に重要である。過去の虐待、戦争体験、喪失などの記憶は、特定の音、匂い、言葉などによって容易に呼び起こされる。そうした瞬間、人は喜びや安心感を完全に失い、その場の経験が台無しになる。この言葉は、過去の苦痛の影響力を軽視せず、他者の感情に配慮する重要性を鋭く訴えている。
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