「商業の世界だけでなく、思想の世界においても、現代はまさに在庫一掃セールを行っている。すべてがあまりにも安っぽく手に入るので、最後には誰も入札すらしたくなくなるのではないかと思えてくる」

- 1813年5月5日~1855年11月11日
- デンマーク出身
- 哲学者、神学者、作家
英文
“Not just in commerce but in the world of ideas too our age is putting on a veritable clearance sale. Everything can be had so dirt cheap that one begins to wonder whether in the end anyone will want to make a bid.”
日本語訳
「商業の世界だけでなく、思想の世界においても、現代はまさに在庫一掃セールを行っている。すべてがあまりにも安っぽく手に入るので、最後には誰も入札すらしたくなくなるのではないかと思えてくる」
解説
この言葉は、現代社会における思想や価値の軽薄化と消費化を痛烈に批判している。キェルケゴールは、真理や信仰、倫理的理念といった本来重みを持つべきものが、流行や便利さ、表面的な理解によって価値を失っていく様を「在庫一掃セール」という比喩で表現している。あらゆるものが簡単に手に入る時代では、それらが持っていた本来の重さや厳粛さが失われていく。
彼の思想では、真の思想や信仰は、苦悩や飛躍、主体的選択を経て獲得されるものであり、決して「安く」手に入るものではない。にもかかわらず、現代人は安易な理解や手軽な情報に飛びつき、深く考えることや実存的な関与を避ける傾向にある。この名言はそのような風潮に対し、本当に価値のあるものが見捨てられていくという危機感を表している。
現代においても、思想や知識がインターネットやメディアによって大量に拡散される一方で、思索の深さや人格の形成が伴わない「安売り状態」が蔓延している。この言葉は、そうした状況に対して、「安い価値」の蔓延が最終的には人々の関心や尊重の念すら失わせてしまうという鋭い警告である。価値あるものは、簡単に手に入らないからこそ価値がある――その真理を再認識させる名言である。
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