「概念も人間と同じように歴史を持ち、そして人間と同じように時の荒波には耐えられない。だが、そのすべてを経たあとでも、彼らは自らの幼少期の風景に対する一種の郷愁を抱き続ける」

- 1813年5月5日~1855年11月11日
- デンマーク出身
- 哲学者、神学者、作家
- 実存主義哲学の先駆者として知られ、「主体的真理」や「信仰の飛躍」といった概念を提唱。個人の内面的な葛藤と信仰の問題を深く掘り下げ、近代思想に大きな影響を与えた。
英文
“Concepts, like individuals, have their histories and are just as incapable of withstanding the ravages of time as are individuals. But in and through all this they retain a kind of homesickness for the scenes of their childhood.”
日本語訳
「概念も人間と同じように歴史を持ち、そして人間と同じように時の荒波には耐えられない。だが、そのすべてを経たあとでも、彼らは自らの幼少期の風景に対する一種の郷愁を抱き続ける」
解説
この言葉は、人間の精神的営みにおける概念の変遷と感情的記憶の関係性を詩的に表現している。キェルケゴールは、抽象的な「概念」さえも、時代や文化、経験とともに変化し、純粋な姿のままでは存在しえないことを示している。だが同時に、それらの概念は起源への懐かしさ――初期の純粋な直感や真理への回帰欲求を内に秘めているとも語る。
この考え方は、彼の実存主義的立場に深く根ざしている。たとえば、「自由」「信仰」「愛」といった概念は、時代ごとに解釈され、制度化され、変質してゆくが、それでもなお、人間の内面において最初にそれを感じた純粋な経験や意味を失ってはいない。それはまるで、成長して老いても幼少の記憶に心を寄せる人間の姿と重なるのである。
現代社会においても、「民主主義」「平和」「真実」といった概念は日々政治的・文化的に再定義されているが、それでも人々の心には、それらが持っていた初源的な意味への郷愁と信頼が残っている。この名言は、概念の歴史性を認めつつ、それでも失われずに残る精神的原風景の存在を示唆し、人間と思想との深い絆を思い出させてくれる。
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