「詩人が詩を書くのは知恵によるのではなく、ある種の本能や霊感によるのだと私は考えた。それは、予言者や神託を告げる者が崇高な言葉を語りながらも、自分でその意味をまったく理解していないのと同じである」

- 紀元前470年頃~紀元前399年
- 古代ギリシャのアテナイ(アテネ)出身
- 哲学者
英文
“I decided that it was not wisdom that enabled poets to write their poetry, but a kind of instinct or inspiration, such as you find in seers and prophets who deliver all their sublime messages without knowing in the least what they mean.”
日本語訳
「詩人が詩を書くのは知恵によるのではなく、ある種の本能や霊感によるのだと私は考えた。それは、予言者や神託を告げる者が崇高な言葉を語りながらも、自分でその意味をまったく理解していないのと同じである」
解説
この名言は、詩的表現の本質を知性ではなく霊感に求めるソクラテスの見解を明確に示している。彼は詩人たちの作品に深い感動を覚えつつも、彼ら自身がその意味を理解していない場合が多いことに気づき、詩作は理性によるものではなく、神的な霊感によってもたらされると結論づけた。この考え方は、『イオン』などの対話篇において繰り返し語られている。
ソクラテスにとって、真の知識とは理解を伴うものでなければならない。詩人がいかに崇高な言葉を紡いでも、それを論理的に説明できなければ、それは「知っている」とは言えない。彼はこの点で、詩人や預言者が語る内容の価値を否定するのではなく、その知の主体性を疑問視したのである。すなわち、知識と霊感を明確に区別し、哲学における理性の優位性を主張した。
現代においても、この言葉は芸術や創造性の意味を考える上で示唆に富む。多くの芸術家が「説明できない力」によって作品を生み出すと語るが、その過程と結果を理解し、共有する能力がなければ、それは知識とは異なる領域にある。この名言は、創作におけるインスピレーションと、理解を通じて深化する知との境界線を問い直すものである。
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