「すべての生命の目的は死である」

ジークムント・フロイトの名言
ジークムント・フロイトの名言
  • 1856年5月6日~1939年9月23日
  • オーストリア帝国(現在のチェコ)出身
  • 神経科医、精神分析学者、思想家
  • 精神分析学の創始者として知られ、無意識、夢分析、エディプス・コンプレックスなどの概念を提唱。20世紀の心理学、文学、哲学に多大な影響を与えた。

英文

“The goal of all life is death.”

日本語訳

「すべての生命の目的は死である」

解説

この名言は、フロイトが晩年に提唱した「死の欲動(タナトス)」という概念の中核をなすものである。彼は生命の根底には快楽や生の維持(エロス)だけでなく、自己を無へと還元しようとする逆方向の力=死への衝動があると考えた。すなわち、生は単に延命や繁栄を目指すだけの過程ではなく、最終的には無機的な静止状態=死に向かっているという逆説的な見方である。

この考えは、1919年以降のフロイトの著作、特に『快原則の彼岸』において展開された。彼はそこにおいて、生物が繰り返し同じ苦痛や破壊的行動に向かうこと、そしてトラウマの反復現象などの臨床的事例を通して、人間の無意識には自己破壊的な傾向が組み込まれていることを指摘した。これは単なる悲観ではなく、生命と死、秩序と崩壊という二元性が心的構造の根底にあるという深い洞察である。

現代においてもこの名言は、生存本能だけでは説明できない人間の破壊性や自滅的行動への傾向を理解する上で示唆に富む。戦争、依存症、自傷行為といった現象は、人間の中に潜む死の欲動が表面化した一形態とも解釈されうる。この言葉は、人間の心理と行動に潜む根源的な矛盾と闇に向き合う覚悟を求める、フロイトの思想の最も過激かつ深遠な命題の一つである。

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