「ほとんどの人間は本当の意味で自由を望んではいない。なぜなら自由には責任が伴い、そして大多数の人間は責任を恐れているからである」

- 1856年5月6日~1939年9月23日
- オーストリア帝国(現在のチェコ)出身
- 神経科医、精神分析学者、思想家
- 精神分析学の創始者として知られ、無意識、夢分析、エディプス・コンプレックスなどの概念を提唱。20世紀の心理学、文学、哲学に多大な影響を与えた。
英文
“Most people do not really want freedom, because freedom involves responsibility, and most people are frightened of responsibility.”
日本語訳
「ほとんどの人間は本当の意味で自由を望んではいない。なぜなら自由には責任が伴い、そして大多数の人間は責任を恐れているからである」
解説
この名言は、自由という概念がしばしば理想化される一方で、それを真に引き受けることがいかに困難であるかを示すフロイトの深い洞察である。彼によれば、自由とは単なる束縛のなさではなく、自己の行動や選択に対して全面的に責任を持つことを意味する。この責任の重さが、人々をして自由から逃れさせ、権威への服従や依存、体制への従属をむしろ心地よいものにしてしまう。
この考えは、フロイトが重視した無意識の力と現実原則との葛藤とも関係する。人間は意識のレベルでは自由を称揚しながらも、内的には欲望や不安、罪悪感から逃れるために「他者に決定を委ねる構造」をとることが多い。つまり、人は自由になりたいと願いつつも、実際にはその負荷から逃れようとする自己矛盾的な存在である。
現代社会においてもこの言葉は極めて示唆に富む。民主主義や個人主義の時代にあって、自由の名のもとに選択肢が増える一方で、それに伴う責任や決断の重みによって多くの人が不安や無力感に陥る現象が見られる。この名言は、真の自由とは「自分で選び、その結果に責任を取る覚悟」にあるという厳しくも本質的なメッセージを伝えており、精神的成熟の条件を問い直す哲学的な警句でもある。
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