「好戦的な国家は、個人であれば恥となるようなあらゆる悪行、あらゆる暴力行為を自らに許す」

ジークムント・フロイトの名言
ジークムント・フロイトの名言
  • 1856年5月6日~1939年9月23日
  • オーストリア帝国(現在のチェコ)出身
  • 神経科医、精神分析学者、思想家
  • 精神分析学の創始者として知られ、無意識、夢分析、エディプス・コンプレックスなどの概念を提唱。20世紀の心理学、文学、哲学に多大な影響を与えた。

英文

“A belligerent state permits itself every such misdeed, every such act of violence, as would disgrace the individual.”

日本語訳

「好戦的な国家は、個人であれば恥となるようなあらゆる悪行、あらゆる暴力行為を自らに許す」

解説

この名言は、戦争状態にある国家が、個人の道徳基準では決して容認されないような行為を正当化し、自らに許す構造を批判的に指摘している。フロイトは、国家や集団が戦争という名のもとに殺人、略奪、破壊、嘘といった行為を堂々と行い、それを愛国心や正義の名にすり替える様子を深く憂慮していた。個人が同じ行為をすれば道徳的にも法的にも非難されるが、国家が同じことをすれば英雄的とさえされるという逆転現象に、彼は文明の脆弱性を見ていた。

この言葉は、フロイトがアルベルト・アインシュタインとの往復書簡(『なぜ戦争なのか?』)の中で展開した人間の攻撃性と社会構造との関係に関する洞察とも密接に関連している。彼は、文明が人間の攻撃性を抑制する一方で、それが国家や戦争といった集団的単位に転化されることで、むしろより大規模な破壊を引き起こすというジレンマを指摘した。

現代においても、この名言は極めて鋭く響く。戦争の名のもとに人権の蹂躙や暴力が正当化されることが繰り返されており、個人には許されない行為が国家レベルでは称賛されるという構造は、過去の歴史にも現在の国際社会にも見られる現象である。この言葉は、倫理と権力の二重基準に対する批判的思考を促し、文明の真の成熟とは何かを問い直す視座を私たちに提供している。

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