「近いようで遠いもの……兄弟や親族の仲。鞍馬のつづら折りと呼ばれる道。十二月の晦日と正月元日のあいだ」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「近うて遠きもの・・・・・・はらから、親族の仲。鞍馬のつづら折りといふ道。十二月のつごもりの日、正月のついたちの日のほど」
現代語訳
「近いようで遠いもの……兄弟や親族の仲。鞍馬のつづら折りと呼ばれる道。十二月の晦日と正月元日のあいだ」
解説
この一節は『枕草子』の「近うて遠きもの」の段に含まれ、物理的な距離と心理的な距離、時間的な感覚の不思議さを巧みに表現している。清少納言は、肉親や親族という本来は近しい存在の間に、実際にはさまざまな事情や感情の隔たりがあることを指摘する。これは、血縁の近さと心の遠さという人間関係の矛盾を鋭くとらえた言葉である。
さらに、「鞍馬のつづら折り」という山道の名前を挙げ、曲がりくねっているために距離的には近いようで実際にはなかなか進めない道を象徴的に示している。そして最後に、十二月三十一日と正月一日という、日数でいえば一日の違いでありながら、その間に横たわる年の変わり目という心理的な隔たりの大きさを挙げることで、時間感覚における「近さと遠さ」も表現している。
現代においても、この感覚は共感を呼ぶ。血縁関係であっても、気持ちの距離が遠いことは珍しくなく、また、年末と年始の間に特別な意味を感じる心理も変わっていない。この一文は、距離や時間の物理的な尺度と、人間の感覚的な尺度の違いを鮮やかに示す名句であり、千年を超えて人間関係や時間の捉え方の本質を語っているのである。
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