「アリはとてもいやなものだが、動きがとても軽やかで、水の上などをただ歩いて歩き回っている様子は、なんともおもしろい」

清少納言の名言(画像はイメージです)
清少納言の名言(画像はイメージです)
  • 966年頃~1025年頃(諸説あり)
  • 日本出身
  • 作家、随筆家

原文

「蟻は、いとにくけれど、軽びいみじうて、水の上などを、ただ歩みに歩みありくこそをかしけれ」

現代語訳

「アリはとてもいやなものだが、動きがとても軽やかで、水の上などをただ歩いて歩き回っている様子は、なんともおもしろい」

解説

この言葉は『枕草子』に見られる一節であり、身近な自然に対する鋭い観察眼とユーモアを示す好例である。清少納言は、アリを「いとにくけれど」と述べ、嫌悪感を示しつつも、その動きの軽やかさに美意識を見出している。特に「水の上などを、ただ歩みに歩みありく」様子を「をかし」と表現し、嫌悪と愛嬌が共存する複雑な感情を巧みに表現している点が特徴である。

この背景には、平安時代の文学における「をかし」という美意識がある。これは「趣がある」「面白みがある」という感覚で、嫌悪対象でさえも、その一面に美や面白さを見出す柔軟な感性を意味する。自然の細部にまで注目し、そこに美を発見する態度は、宮廷文化の洗練を示すものであった。

現代でも、この感覚は通じる。例えば、普段は厄介に感じる虫や雑草の中に、不思議な魅力や生態の面白さを見出すことがある。この一文は、嫌悪の中にも美を見いだし、日常の中に小さな発見を重ねることの価値を伝えており、現代人にとっても自然観察や美意識のヒントとなるのである。

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