「秋は夕暮れがよい。夕日が差して、山の端がとても近くに見えるとき、カラスがねぐらへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急ぐ様子までもしみじみと趣深い」

清少納言の名言(画像はイメージです)
清少納言の名言(画像はイメージです)
  • 966年頃~1025年頃(諸説あり)
  • 日本出身
  • 作家、随筆家

原文

「秋は夕暮。夕日のさして山のはいとちかうなりたるに、からすのねどころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなどとび急ぐさへあはれなり」

現代語訳

「秋は夕暮れがよい。夕日が差して、山の端がとても近くに見えるとき、カラスがねぐらへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急ぐ様子までもしみじみと趣深い」

解説

この言葉は『枕草子』において季節の中で秋と、その最も美しい時刻を描写した名文である。清少納言は、自然の風景の中にある小さな動きに深い感動を見出す感性を持っていた。本句では、夕日の光が山際に差し込み、カラスがねぐらへ急ぐ光景を「あはれ」と表現している。これは平安時代の貴族社会において重視された「もののあはれ」という美意識を象徴する表現である。

この情景が生まれた背景には、平安貴族の生活様式がある。当時、自然は単なる背景ではなく、心情や季節感を映すものとして文学の重要な題材であった。夕暮れ時の秋の風景は、一日の終わりと自然の静けさを重ね、無常観や寂寥感を感じさせる時間であったため、人々に深い感慨を与えた。

現代においても、この感覚は共感を呼ぶ。例えば、都市で暮らす人が夕焼けを見て立ち止まり、カラスの群れが電線を渡る様子にしみじみとすることがある。この言葉は、日常の中に潜む美を見出し、心を寄せることの大切さを教えている。慌ただしい時代においても、自然や小さな変化に目を向けることは、心を豊かに保つための普遍的な価値を持っているのである。

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