「じれったいもの……遠くにいる恋しい人からの手紙を受け取って、しっかり封じられた封を開けるときほど、なんとももどかしいものはない」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「心もとなきもの・・・・・・遠き所より思ふ人の文を得て、かたく封じたるそくひなどあくるほど、いと心もとなし」
現代語訳
「じれったいもの……遠くにいる恋しい人からの手紙を受け取って、しっかり封じられた封を開けるときほど、なんとももどかしいものはない」
解説
この一節は『枕草子』の「心もとなきもの」の段に見られる表現であり、恋文を開けるときの緊張と期待がもたらす心理的な高まりを描いている。清少納言は、遠方の恋人から届いた手紙を開封する瞬間のもどかしさを「心もとなし」と表現した。ここでの「心もとなし」は、「待ち遠しい」「落ち着かない」「気が気でない」という感情を意味し、手紙を開くまでのわずかな時間に募る期待と焦燥が鮮やかに表されている。
この背景には、平安時代の恋愛における文(手紙)の重要性がある。当時の貴族社会では、直接会うことが難しく、恋愛は和歌や手紙のやりとりを通じて進展した。そのため、手紙は単なる連絡手段ではなく、愛情を確かめる最重要の絆であった。この一文は、そのやりとりの中で生じるときめきや不安という微妙な心理を、簡潔にとらえている。
現代においても、この感覚は共感を呼ぶ。メールやメッセージを開く瞬間、特に大切な人からの返信を待つ時間は、千年前と同じく胸を高鳴らせるものである。この一文は、愛する人からの言葉を待つときの人間の普遍的な心理を描き出し、時代を超えて共感できる名文であるといえる。
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