「冬は早朝がよい。雪が降っているのは言うまでもなく、霜が真っ白に降りているのも、また、そうでなくてもとても寒いときに、火を急いでおこし、炭を運んでくるのも、とても冬らしく趣深い」

清少納言の名言(画像はイメージです)
清少納言の名言(画像はイメージです)
  • 966年頃~1025年頃(諸説あり)
  • 日本出身
  • 作家、随筆家

原文

「冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいとしろきも、またさらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭持てわたるもいとつきづきし」

現代語訳

「冬は早朝がよい。雪が降っているのは言うまでもなく、霜が真っ白に降りているのも、また、そうでなくてもとても寒いときに、火を急いでおこし、炭を運んでくるのも、とても冬らしく趣深い」

解説

この一節は『枕草子』の中でも、「春はあけぼの」と並んで有名な、四季の情景美を描いた章段である。清少納言は、冬の魅力を「つとめて」(早朝)に見いだし、雪や霜といった自然の光景に加え、寒さの中で火をおこし炭を運ぶという生活感のある動作を描き出している。ここには、自然と人の営みが調和する風景に趣を感じる、平安貴族の美意識が鮮やかに表れている。

背景として、当時の宮廷文化では、四季折々の情景を愛で、その中にある「つきづきし」(季節にふさわしい趣)を重視した。「雪はいふべきにもあらず」という強調は、雪景色が冬の美を最も象徴することを示しつつ、霜や寒さに対する感覚の細やかさが、清少納言の鋭敏な感性を物語っている。さらに、炭を運ぶという日常的な行為を取り上げている点に、平安文学の特質である生活の美意識が顕著に見られる。

現代においても、この感覚は共感を呼ぶ。冬の朝、白く染まった景色を眺めながら暖をとる心地よさは、千年を経ても変わらない。この一文は、自然と生活の中に潜む美を簡潔な言葉で描き出す日本的感性の精華であり、『枕草子』を代表する名文として今なお読み継がれているのである。

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