「腹立たしいもの……火桶や炭櫃の火に、手のひらを何度もひっくり返しながら、押しつけるようにしてあたっている人」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「にくきもの・・・・・・火桶の火、炭櫃などに、手のうらうち返しうち返し、おしのべなどしてあぶり居る者」
現代語訳
「腹立たしいもの……火桶や炭櫃の火に、手のひらを何度もひっくり返しながら、押しつけるようにしてあたっている人」
解説
この一節は『枕草子』の「にくきもの」の段に含まれ、人の仕草や態度に対する微妙な嫌悪感を率直に描いたものである。清少納言は、火桶や炭櫃の火に両手をかざし、手のひらをひっくり返したり、押し当てるようにして暖を取る人を「にくきもの」と評している。この描写には、上品さを欠いただらしなさや、見苦しさに対する強い美意識が反映されている。
平安時代の宮廷文化では、所作の優雅さや節度が重んじられ、仕草一つにも品位が求められた。火に手を近づける際の動きは、控えめで柔らかいことが理想とされたが、ここで挙げられるような大げさでがさつな動作は、洗練された場の雰囲気を損なうものと見なされたのである。清少納言の批評には、美的感覚と礼儀意識の高さがうかがえる。
現代においても、この感覚は理解できる。例えば、公共の場で大きな音を立てて食事をする人や、落ち着きなく動き回る人に不快感を抱く心理に通じる。この一文は、時代を超えて共通する「仕草の品格」への意識を示し、日常の中に潜む美意識の重要性を思い起こさせるのである。
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