「腹立たしいもの……こっそりやって来た人を見つけて吠える犬」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「にくきもの・・・・・・忍びて来る人見しりて吠ゆる犬」
現代語訳
「腹立たしいもの……こっそりやって来た人を見つけて吠える犬」
解説
この一節は『枕草子』の「にくきもの」の段に含まれ、日常の小さな苛立ちを生き生きと描いた表現である。清少納言は、忍んで訪れる人、つまり誰にも気づかれずに静かにやって来ようとする人物を、犬が吠えて台無しにする場面を「にくきもの」と評している。ここには、状況の機微を理解せず騒ぎ立てる存在への嫌悪感と、思い通りにならないもどかしさが込められている。
平安時代、宮廷や貴族の邸宅では犬が飼われており、門や庭で警戒役を果たしていた。しかし、恋愛や内々の訪問においては、人目を避けてやって来ることがしばしばあり、その際に犬が吠えるのは大きな障害であった。これは、恋愛が密やかさと優雅さを重んじる文化の中で、犬という現実的な存在がもたらす滑稽さと煩わしさを象徴する場面である。
現代でも、この感覚は理解できる。静かに驚かせようとしたサプライズや、こっそりとした訪問が、ペットの鳴き声で台無しになることは珍しくない。この一文は、人間の計画や感情を、動物や予期せぬ出来事が容易に崩してしまうという普遍的なテーマを、軽妙な筆致で描いたものであり、千年前と変わらぬ日常の一コマを鮮やかに伝えているのである。
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