「胸がときめくもの……髪を洗って化粧をし、香り高く染めた衣を身につけているとき。特に見てくれる人がいない場所であっても、心の中はやはりとても晴れやかで楽しい」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「こころときめきするもの・・・・・・かしら洗ひ化粧じて、香ばしう染みたる衣など着たる。ことに見る人なき所にても、心のうちはなほいとをかし」
現代語訳
「胸がときめくもの……髪を洗って化粧をし、香り高く染めた衣を身につけているとき。特に見てくれる人がいない場所であっても、心の中はやはりとても晴れやかで楽しい」
解説
この一節は『枕草子』の「こころときめきするもの」の段に含まれる表現であり、美しく装うことの内面的な喜びを端的にとらえた言葉である。清少納言は、髪を洗い、化粧を施し、香り高い衣を身につけるという行為そのものに、見られることとは関係のない内的な満足感と高揚感があることを指摘している。ここでは、自己のために装う楽しみが、千年前の女性にも強く意識されていたことがわかる。
当時の平安貴族社会では、髪や装束の美しさは重要な価値を持ち、特に女性にとって外見の整え方は教養や美意識の象徴であった。しかし、この一文の核心は、他者の視線を意識しない場面でも心が弾むという心理にある。この感覚は、宮廷文化における自己陶酔や美の追求を表すと同時に、内面的な充足感の普遍性を示している。
現代においても、この感覚は共感できる。新しい服を着たり、髪を整えたり、香りをまとうことで、誰かに見せるためではなく、自分自身の気持ちを高めることがある。この一文は、「美しくあることは他者のためだけでなく、自分の心を豊かにするためでもある」という普遍的な真理を、平安時代の女性の視点から語っているのである。
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