「きまりが悪くて見ていられないもの……かわいくもない子どもを、自分の気持ちのままにかわいがって、愛おしそうにし、その子どもがしゃべったことを声色そのままに語って聞かせること」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「かたはらいたきもの・・・・・・にくげなるちごを、おのが心地の愛しきままに、うつくしみ、愛しがり、これが声のままに、言ひたることなど語りたる」
現代語訳
「きまりが悪くて見ていられないもの……かわいくもない子どもを、自分の気持ちのままにかわいがって、愛おしそうにし、その子どもがしゃべったことを声色そのままに語って聞かせること」
解説
この言葉は『枕草子』の「かたはらいたきもの」の段に含まれる一節であり、清少納言特有の率直で辛辣な視点を示している。「にくげなるちご」とは「かわいげのない子ども」を意味し、その子を過剰にかわいがり、さらにその子の幼い言葉を真似て周囲に語る親の様子を、清少納言は「かたはらいたし」と評している。ここでの「かたはらいたし」は「見苦しい」「気恥ずかしい」「聞いていていたたまれない」という感覚を含む。
この背景には、平安貴族社会の美意識がある。当時の宮廷文化では、上品さと控えめな態度が重視され、過剰な愛情表現や自己陶酔は品位を欠くものと見なされた。そのため、かわいげのない子を無理に持ち上げる態度や、幼児語をそのまま再現して得意げに話すことは、周囲にとって大いに「かたはらいたい」行為であったのである。
現代においても、この感覚は共感できる。例えば、SNSで親が過剰に子どもの言動を披露したり、周囲の空気を読まずに自慢話を続ける姿は、見ている側に居心地の悪さを感じさせることがある。この一文は、愛情表現の適度さや、場の空気を読む感覚の重要性を示し、千年前と変わらぬ人間心理と社交感覚を私たちに伝えているのである。
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