「気がかりなもの……今やって来たばかりの人の気持ちもわからないまま、大切な品物を持たせて誰かのもとにやったのに、その人がなかなか帰ってこないこと」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「おぼつかなきもの・・・・・・いま出で来たる者の心も知らぬに、やむごとなき物持たせて、人のもとにやりたるに、おそく帰る」
現代語訳
「気がかりなもの……今やって来たばかりの人の気持ちもわからないまま、大切な品物を持たせて誰かのもとにやったのに、その人がなかなか帰ってこないこと」
解説
この言葉は『枕草子』の「おぼつかなきもの」の段に見られる一文であり、人間の不安や落ち着かない心理を巧みに描いた表現である。「おぼつかなきもの」とは、「はっきりせず気がかりで不安なもの」という意味である。清少納言は、来訪したばかりの人物の本心も知らぬまま、大切な物を託し使いに出したのに、なかなか戻らない状況を挙げ、心配でならない心情を率直に記している。
この背景には、当時の生活様式が関係している。平安時代は連絡手段が乏しく、使者を介して物や文を届けることが一般的であった。しかし、使者の性格や誠意をよく知らない場合、物を託すことには大きな不安が伴った。この一文は、そうした日常の不便さと、それに起因する「待つこと」への焦燥感を生き生きと伝えている。
現代でも、この感覚は理解できる。宅配便やメッセージを送った後、届いたかどうか、相手がどんな反応を示すかを気にしてしまうことはよくある。この一文は、人間の不安や期待が時代を超えて変わらないことを示し、現代人にも共感を呼ぶ普遍的な心理描写となっているのである。
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