「うらやましく思われるもの……病気で寝込んでいるときに、笑ったり話したり、何の心配もなさそうに歩き回っている人を見ると、本当にうらやましく感じられる」

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
原文
「うらやましげなるもの・・・・・・心地などわづらひて臥したるに、笑うちわらひ、ものなど言ひ、思ふ事なげにて歩みありく人みるこそ、いみじううらやましけれ」
現代語訳
「うらやましく思われるもの……病気で寝込んでいるときに、笑ったり話したり、何の心配もなさそうに歩き回っている人を見ると、本当にうらやましく感じられる」
解説
この言葉は『枕草子』の「うらやましげなるもの」の段にある一文で、人間の素直な感情と視点を率直に描いた表現である。清少納言は、病に臥しているとき、元気に歩き回り、笑いながら話をしている人を見て「いみじううらやましけれ」と述べている。ここには、病気の苦しみや不自由さを痛感している者にとって、健康であることの価値が際立って見えるという心理が端的に表れている。
平安時代は現代のような医療が発達しておらず、病は死に直結する深刻な事態であった。そのため、健康であることは何よりの幸せであり、「思ふ事なげにて歩みありく」という状態は、多くの人にとって理想であり憧れであった。この一文は、そうした時代背景を踏まえた上で、清少納言が自らの感情を飾らずに書き記している点に魅力がある。
現代においても、この感覚は共感を呼ぶ。病気や体調不良で寝込んでいるとき、SNSなどで元気な人々の投稿を見て複雑な気持ちになることがある。この一文は、健康の尊さと、他者へのうらやましさという人間の正直な心情を描き出し、千年前も今も変わらぬ普遍的な感覚を私たちに伝えているのである。
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