「人が自分の不幸を語るとき、その中には彼にとって必ずしも不快ではない要素がある。なぜなら、純粋な不幸しかなければ、それを口にすることは決してないからである」

- 1709年9月18日~1784年12月13日
- イギリス出身
- 詩人、評論家、辞書編纂者、伝記作家
英文
”Depend upon it that if a man talks of his misfortunes there is something in them that is not disagreeable to him; for where there is nothing but pure misery there never is any recourse to the mention of it.”
日本語訳
「人が自分の不幸を語るとき、その中には彼にとって必ずしも不快ではない要素がある。なぜなら、純粋な不幸しかなければ、それを口にすることは決してないからである」
解説
この言葉は、人間が不幸を語る心理の二面性を鋭く指摘している。人は自らの苦境を訴えるが、その背後にはしばしば同情を得たい欲求や、注目を浴びたい欲求が潜んでいる。もし不幸がただ苦痛だけのものであれば、むしろ口を閉ざし、他人に話すことさえ避けるだろう。
18世紀のイギリス社会でも、人々がサロンや社交の場で自らの不幸を語ることは珍しくなかった。ジョンソンはその様子を観察し、人は苦悩の中にさえ自己満足や優越感を見出すことがあると喝破した。つまり、不幸の語りは純粋な嘆きではなく、人間の虚栄心や承認欲求の表れでもあったのである。
現代においても、この洞察は普遍性を持つ。SNSや会話の場で不幸や困難を語ることは、しばしば他者からの共感や慰めを引き出す行為となっている。もちろんそれは人間関係を築く一助にもなるが、同時に「語ることで得られる満足」が含まれている。ジョンソンの言葉は、我々が不幸を表現するときの心理の複雑さを明らかにし、苦悩の中に潜む自己満足の影を浮かび上がらせているのである。
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