「可能な限り避けるべきことは、『だがどうしてそうなり得るのか?』と自分に言い続けることである。そうすれば行き止まりに入り込み、誰もまだ抜け出したことのない袋小路に陥るだろう。なぜそうなり得るのかは誰にも分からないのだ」

- 1918年5月11日~1988年2月15日(69歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 理論物理学者
英文
”Do not keep saying to yourself, if you can possibly avoid it, ‘But how can it be like that?’ because you will get ‘down the drain,’ into a blind alley from which nobody has yet escaped. Nobody knows how it can be like that.”
日本語訳
「可能な限り避けるべきことは、『だがどうしてそうなり得るのか?』と自分に言い続けることである。そうすれば行き止まりに入り込み、誰もまだ抜け出したことのない袋小路に陥るだろう。なぜそうなり得るのかは誰にも分からないのだ」
解説
この言葉は、自然の根本的な仕組みに対する限界認識を表している。ファインマンは、量子力学のように直感に反する現象を理解しようとするとき、なぜそのような仕組みが可能なのかを問い詰めすぎると、答えのない迷路に迷い込む危険があると警告している。科学は「なぜそうであり得るのか」ではなく、「そうである」という事実をどのように記述し、予測できるかを重視する営みなのである。
歴史的に見ても、量子現象は古典的な直観では説明不可能であった。電子が波であり粒子であるという二重性や、不確定性原理は「なぜそうであるのか」を問うよりも、「その性質をどう扱うか」を考えることで進展してきた。ファインマンの姿勢は、哲学的な説明を追い求めて停滞するのではなく、実際に機能する理論を構築するという物理学的実用主義を反映している。
現代社会でも、この視点は重要である。人工知能や意識の問題、宇宙の起源といったテーマでは「なぜそうなのか」という問いに最終的な答えがないことも多い。そのとき重要なのは、問い続けて立ち止まるのではなく、観測できる現象をもとに理解と応用を進める姿勢である。ファインマンの言葉は、科学の進歩を妨げないための知的態度を端的に示している。
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