「私にとってあの場面の記憶は、一枚のフィルムのように、その瞬間で永遠に止まったままだ。赤いカーペット、緑の芝生、白いホワイトハウス、鉛色の空。新しい大統領とファーストレディ」

- 1913年1月9日~1994年4月22日
- アメリカ合衆国出身
- 政治家、弁護士、第37代アメリカ合衆国大統領
- 外交政策において米中関係の正常化やソ連とのデタントを進めたが、ウォーターゲート事件により辞任した初の大統領としても知られている。冷戦期アメリカ政治の象徴的人物である。
英文
“The memory of that scene for me is like a frame of film forever frozen at that moment: the red carpet, the green lawn, the white house, the leaden sky. The new president and his first lady.”
日本語訳
「私にとってあの場面の記憶は、一枚のフィルムのように、その瞬間で永遠に止まったままだ。赤いカーペット、緑の芝生、白いホワイトハウス、鉛色の空。新しい大統領とファーストレディ」
解説
この言葉は、ニクソンが大統領を辞任し、後任のフォード大統領に政権を引き渡すその瞬間の情景を回想したものである。政治家としての頂点から失脚し、静かに舞台を去るその情景は、彼にとって永遠に記憶に焼きついた象徴的な一幕であった。詩的な比喩を用いて語られるこの記憶は、個人としての喪失感と歴史の移ろいを同時に表現している。
特に印象的なのは、「a frame of film forever frozen(永遠に凍りついたフィルムの一コマ)」という表現である。これは、政治家としての人生が一区切りを迎えた決定的瞬間を切り取る映画的な演出であり、自己神話化の側面も含まれる。赤・緑・白・鉛色といった色彩の対比もまた、厳粛さと静けさ、そして新旧交代の儀式性を視覚的に強調している。
この発言は、権力の座から退く者の視点として、政治の非情さと儀式の美しさが交錯する稀有な記録である。現代においても、政権移行の場面は民主主義の成熟を示す象徴的行為であり、このような視覚的かつ感情的な記録は、政治が単なる制度ではなく、人間のドラマであることを改めて教えてくれる。
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