「私は決して途中で投げ出す人間ではない。任期を全うせずに職を離れることは、私の本能すべてに反する行為だ。しかし、大統領として私はアメリカの利益を最優先しなければならない。よって、私は明日正午をもって大統領職を辞任する」

- 1913年1月9日~1994年4月22日
- アメリカ合衆国出身
- 政治家、弁護士、第37代アメリカ合衆国大統領
- 外交政策において米中関係の正常化やソ連とのデタントを進めたが、ウォーターゲート事件により辞任した初の大統領としても知られている。冷戦期アメリカ政治の象徴的人物である。
英文
“I have never been a quitter. To leave office before my term is completed is opposed to every instinct in my body. But as president I must put the interests of America first. Therefore, I shall resign the presidency effective at noon tomorrow.”
日本語訳
「私は決して途中で投げ出す人間ではない。任期を全うせずに職を離れることは、私の本能すべてに反する行為だ。しかし、大統領として私はアメリカの利益を最優先しなければならない。よって、私は明日正午をもって大統領職を辞任する」
解説
この発言は、1974年8月8日、リチャード・ニクソンがホワイトハウスからテレビ演説を通じて国民に向けて発表した辞任声明の一節であり、アメリカ史上初の大統領辞任として歴史に残る言葉である。ウォーターゲート事件によって議会と国民からの信頼を失い、弾劾が現実となる中で、ニクソンは苦渋の決断として大統領の座を自ら退いた。
特に印象的なのは、「I have never been a quitter(私は途中で投げ出す人間ではない)」という自己像の主張と、それに続く「But… I must put the interests of America first(しかし、アメリカの利益を最優先しなければならない)」という国家的責任の強調である。ここには、個人としてのプライドと、国家のために自らを犠牲にするという大統領としての責任感がせめぎ合う複雑な感情が込められている。
この名言は、単なる辞任の表明ではなく、権力者が自らの敗北を認め、平和的に権限を引き渡すことの重みと成熟した民主主義の証でもある。ニクソンのこの言葉は、リーダーシップとは自我に固執することではなく、国家と制度の安定を優先する英断であることを示す、政治史上屈指の名言である。
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