「ジェイムズ・ジョイス氏は、まったく趣味を持たない偉大な人物です」

レベッカ・ウェスト(画像はイメージです)
レベッカ・ウェスト(画像はイメージです)
  • 1892年12月21日~1983年3月15日(90歳没)
  • イギリス出身
  • 作家、評論家、ジャーナリスト、フェミニスト

英文

”Mr. James Joyce is a great man who is entirely without taste.”

日本語訳

「ジェイムズ・ジョイス氏は、まったく趣味を持たない偉大な人物です」

解説

この言葉は、モダニズム文学の巨匠であるジェイムズ・ジョイスに対する鋭い批評である。レベッカ・ウェストの時代、ジョイスの作品『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』は文学表現の革新として高く評価される一方、その難解さや常識を覆す表現は強い賛否を呼んだ。ここでの「偉大」と「まったく趣味を持たない」という表現は、彼の影響力の大きさを認めつつも、従来の美的価値観からすれば無作法で過激と映ったことを示している。

この批評は、芸術における美的洗練と革新性の対立を端的に表している。ジョイスの試みは、古典的な形式や整った調和を意図的に破壊し、新しい言語表現を開拓したものであった。しかしそれは、従来の「趣味」の基準を超越し、むしろ破壊したために「無味覚」と見なされたのである。

現代的な観点から見ると、この言葉は芸術における価値基準の相対性を示していると解釈できる。今日ジョイスの実験的手法は文学史上の偉業として評価されているが、同時代に生きた批評家にとっては強烈な挑発であった。ウェストの発言は、偉大さと趣味の欠如が共存し得る矛盾を突き、芸術の進歩における葛藤を象徴しているのである。

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