「私は精神の機能を失ったが、まったく元気である」

ラルフ・ワルド・エマーソンの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1803年5月25日~1882年4月27日
  • アメリカ合衆国出身
  • 哲学者、随筆家、詩人、超越主義運動の指導者

英文

“I have lost my mental faculties but am perfectly well.”

日本語訳

「私は精神の機能を失ったが、まったく元気である」

解説

この名言は、理性や知性の喪失と、存在としての健全さが必ずしも一致しないという逆説的な気づきを示している。「mental faculties(精神の機能)」という表現は、思考力・判断力・記憶力などを含む理知的な能力を指し、通常それを失うことは重大な損失とされる。しかし、エマーソンはそれにもかかわらず「perfectly well(まったく元気である)」と述べることで、精神的・身体的存在の根源は、知性よりも深い次元にあることを暗示している。

この言葉は、エマーソン晩年の言動とも結びついており、実際に彼は老年期に記憶力を大きく損ないながらも、精神的には穏やかで落ち着いた状態を保っていたと記録されている。超越主義者としての彼の思想においては、魂や存在の本質は知的能力に限定されるものではなく、自然との調和や精神の静けさにある。その意味で、この名言は彼自身の生き様と哲学が融合した、人間存在の深さを語る証言とも言える。

現代においてもこの名言は、高齢化社会や認知症と向き合う中で、個人の尊厳をどこに見出すべきかという問いに対する重要な視点を提供する。人は記憶や論理を失っても、存在としての価値や豊かさを保ち続けることができるという、精神の奥深い肯定をこの言葉は語っている。理性の喪失すら包み込む、静かな肯定の力をもつ名言である。

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