「社会主義諸国の歴史的経験は悲しいことに、集産主義が疎外を解消するのではなく、むしろそれを増大させ、さらに生活必需品の欠乏と経済の非効率を加えることを示している」

教皇ヨハネ・パウロ2世(画像はイメージです)
教皇ヨハネ・パウロ2世(画像はイメージです)
  • 1920年5月18日~2005年4月2日(84歳没)
  • ポーランド出身
  • ローマ教皇、哲学者、神学者

英文

”The historical experience of socialist countries has sadly demonstrated that collectivism does not do away with alienation but rather increases it, adding to it a lack of basic necessities and economic inefficiency.”

日本語訳

「社会主義諸国の歴史的経験は悲しいことに、集産主義が疎外を解消するのではなく、むしろそれを増大させ、さらに生活必需品の欠乏と経済の非効率を加えることを示している」

解説

この言葉は、ヨハネ・パウロ2世が社会主義体制の問題点を指摘したものである。彼は社会主義が掲げる理想—平等や共同体意識—を否定はしなかったが、その実際の運用が人間疎外を深め、経済的困難をもたらしたと批判した。ここでいう「疎外」とは、人間が自らの労働や共同体から切り離され、自由や尊厳を失う状態を意味している。

歴史的背景として、これは冷戦時代の東欧やソ連の現実を踏まえての発言である。社会主義諸国ではしばしば基本的な生活物資が不足し、国家主導の計画経済が効率を欠いた。その中で人々は自由を制限されながらも十分な生活を得られないという二重の疎外に苦しんだ。ヨハネ・パウロ2世自身、ポーランドでこの現実を目の当たりにしており、その経験がこの言葉に重みを与えている。

現代においても、この名言は経済体制と人間の尊厳の関係を考える上で重要である。単なる集団的な管理や理想論ではなく、人間の自由と創造性を尊重する制度でなければ真の繁栄は実現しない。つまりこの言葉は、イデオロギーに偏らず、人間中心の社会構築が必要であるという普遍的な教訓を示しているのである。

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