「今世紀における人間の残虐さの犠牲者たちの墓地は、さらにもう一つの広大な墓地、すなわち生まれぬまま命を絶たれた者たちの墓地へと広がっている」

- 1920年5月18日~2005年4月2日(84歳没)
- ポーランド出身
- ローマ教皇、哲学者、神学者
英文
”The cemetery of the victims of human cruelty in our century is extended to include yet another vast cemetery, that of the unborn.”
日本語訳
「今世紀における人間の残虐さの犠牲者たちの墓地は、さらにもう一つの広大な墓地、すなわち生まれぬまま命を絶たれた者たちの墓地へと広がっている」
解説
この言葉は、ヨハネ・パウロ2世が中絶問題を人類の重大な倫理的課題として強く訴えたものである。彼は20世紀に戦争や虐殺によって数え切れない犠牲者が生まれたことを認めつつ、そこに加えて「生まれる前に奪われた命」もまた同じ悲劇の一部であると指摘した。ここで強調されているのは、人間の生命は受胎の瞬間から尊重されるべきであるというカトリックの一貫した立場である。
歴史的背景として、この発言は20世紀後半における中絶合法化の流れと深く関係している。戦争や全体主義の犠牲者の記憶がなお鮮烈であった時代に、ヨハネ・パウロ2世は中絶もまた人類の残虐さの一形態であるとし、その道徳的意味を社会に問いかけた。彼の視点では、戦争と中絶はいずれも「無辜の命を奪う行為」として同列に扱われている。
現代においても、この言葉は生命倫理や人権問題を考える上で重要な警鐘である。たとえば医療技術の進歩や社会的選択が新たな「命の選別」を生み出す危険性がある中、この名言は人間社会が命の尊厳を守るべきであることを強く訴えている。つまり、この言葉は人間の残虐さを克服するには、最も弱き者の生命を守ることが不可欠であると示しているのである。
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