「私には、政治や経済の領域でさえも道徳的責任を必要としていることを再発見することが必要に思える。そしてそのための力は存在している。この責任は人間の心に生まれるものであり、最終的には神の現存の有無に関わっている」

- 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
- ドイツ出身
- ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿
英文
”To me, its seems necessary to rediscover – and the energy to do so exists – that even the political and economic spheres need moral responsibility, a responsibility that is born in man’s heart and, in the end, has to do with the presence or absence of God.”
日本語訳
「私には、政治や経済の領域でさえも道徳的責任を必要としていることを再発見することが必要に思える。そしてそのための力は存在している。この責任は人間の心に生まれるものであり、最終的には神の現存の有無に関わっている」
解説
この言葉は、政治や経済の分野における道徳的基盤の必要性を強調している。ベネディクト16世は、制度や市場の仕組みがどれほど発展しても、それを支える人間の良心が欠けていれば正義や公共善は実現できないと考えていた。ここで語られる「再発見」とは、近代社会が失いつつある倫理的・宗教的基盤を取り戻すことを意味している。
「responsibility that is born in man’s heart」という表現は、道徳的責任が外部から押し付けられるものではなく、内的良心から生じることを示す。さらに、その根源が「神の現存の有無」に関わっているとする点は、神学的視点から人間の倫理を説明している。すなわち、神を認めるか否かが、人間の行動の基準と社会の在り方に深い影響を及ぼすという主張である。
現代的に見れば、この言葉は経済的利益や政治的権力が優先され、倫理が軽視される風潮への批判として響く。環境破壊、貧困格差、金融危機といった問題の背景には、しばしば道徳的責任の欠如がある。したがって、この発言は社会制度の改革以前に、まず人間の心に根ざす良心と霊的基盤を回復する必要性を説いているのである。
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