「十字架は、言葉によるのではなく、極めて根源的な行為によって私たちの存在を承認するものである。それは神が肉となり、この肉が深く貫かれるほどに徹底された行為であり、神にとっては御子が受肉し死に至るに値するものであった」

教皇ベネディクト16世(画像はイメージです)
教皇ベネディクト16世(画像はイメージです)
  • 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
  • ドイツ出身
  • ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿

英文

”The Cross is the approbation of our existence, not in words, but in an act so completely radical that it caused God to become flesh and pierced this flesh to the quick; that, to God, it was worth the death of his incarnate Son.”

日本語訳

「十字架は、言葉によるのではなく、極めて根源的な行為によって私たちの存在を承認するものである。それは神が肉となり、この肉が深く貫かれるほどに徹底された行為であり、神にとっては御子が受肉し死に至るに値するものであった」

解説

この言葉は、キリスト教における十字架の神学的意味を凝縮した表現である。単なる象徴や言葉ではなく、神が人間の救いのために取った具体的で決定的な行為が十字架であるとされる。ここで強調されているのは、十字架が人間の存在そのものを肯定する究極の証拠であるという点である。神が人間の歴史に身を投じ、苦しみと死を引き受けることで、人間の存在には救いと意味が与えられる。

さらに「pierced this flesh to the quick」という表現は、受肉したキリストが経験した痛みと死の現実性を示す。これは比喩ではなく実際の出来事であり、神の愛が単なる理念ではなく歴史的行為として示されたことを強調している。ここには、神学的に「神が人類のために自らを徹底的に犠牲にした」という徹底した自己犠牲の思想が込められている。

現代においてこの言葉が持つ意味は、人間の存在価値が苦しみや犠牲を通じて確認されるという視点にある。自己否定や無意味感が蔓延する時代において、十字架は「存在そのものが無条件に肯定されている」という強力なメッセージを放つ。信仰者にとって十字架は絶望の象徴ではなく、存在の意味と愛の極限的証明であり、そこに生きる力を見出すことができるのである。

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