「『解放の神学』という用語が、非常に肯定的な意味で解釈できるとしても、私たちにどれほど役立つかは分からない。重要なのは、教会が根本的に寄与する共通の理性であり、それは常に、公的生活と私的生活の双方における良心の形成を助けなければならない」

- 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
- ドイツ出身
- ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿
英文
”I don’t know if the term ‘liberation theology,’ which can be interpreted in a very positive sense, will help us much. What’s important is the common rationality to which the church offers a fundamental contribution, and which must always help in the education of conscience, both for public and for private life.”
日本語訳
「『解放の神学』という用語が、非常に肯定的な意味で解釈できるとしても、私たちにどれほど役立つかは分からない。重要なのは、教会が根本的に寄与する共通の理性であり、それは常に、公的生活と私的生活の双方における良心の形成を助けなければならない」
解説
この言葉は、解放の神学に対する慎重な姿勢を示しつつ、教会の本質的役割を強調している。解放の神学は20世紀後半にラテンアメリカで生まれ、社会的不正義からの解放を強調したが、政治的イデオロギーとの結びつきから議論を呼んだ。ベネディクト16世はその肯定的側面を認めつつも、用語や運動自体よりも普遍的な理性の共有と良心の教育が重要であると強調している。
歴史的背景として、ヨーゼフ・ラツィンガー枢機卿(後のベネディクト16世)は教理省長官時代、解放の神学に対して警戒心を持ち、マルクス主義的要素を排除しようとした。その一方で、社会正義の重要性そのものを否定するのではなく、教会が理性と信仰を基盤に良心を教育する使命を持つことを繰り返し訴えた。この発言は、その姿勢をよく表している。
現代社会においても、この指摘は意義深い。社会運動や政治思想が変動する中で、教会の役割は特定のイデオロギーへの追従ではなく、公的生活と私的生活双方における良心の形成を支える普遍的価値の提示にある。この名言は、信仰と理性を通じて人間の良心を導くことこそが、教会の普遍的使命であると強調している。
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