「同性愛者の特定の傾向それ自体は罪ではないが、それは多かれ少なかれ本来的に道徳的悪へと向かう傾向であり、そのためこの傾向自体は客観的に秩序を欠いたものと見なされなければならない」

- 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
- ドイツ出身
- ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿
英文
”Although the particular inclination of the homosexual person is not a sin, it is more or less strong tendency ordered to an intrinsic moral evil, and thus the inclination itself must be seen as an objective disorder.”
日本語訳
「同性愛者の特定の傾向それ自体は罪ではないが、それは多かれ少なかれ本来的に道徳的悪へと向かう傾向であり、そのためこの傾向自体は客観的に秩序を欠いたものと見なされなければならない」
解説
この言葉は、カトリック教会における同性愛理解を示したものであり、同性愛行為そのものを罪とする一方で、傾向そのものは罪ではないが「客観的無秩序」と位置づけている。つまり、同性愛の傾向を持つ人を直接罪人と断ずるのではなく、神学的枠組みにおいて行為との区別を設けているのである。
歴史的背景として、この考え方は1986年に教理省が出した文書に端を発する。当時、ヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿(後のベネディクト16世)が教理省長官を務めており、そこで同性愛の「客観的無秩序」という表現が用いられた。これは伝統的教義を維持する立場を示すものであり、現代社会の人権的価値観との間に強い緊張を生み出した。
現代においては、この立場は多くの批判や議論を呼んでいる。LGBTQの権利が広く認められつつある今日、この言葉は教会と社会の価値観の衝突を象徴するものといえる。同時に、カトリック教会は傾向を持つ人々への尊重と牧会的配慮を求めており、単なる排除ではなく、信仰共同体の中での理解と共存が課題となっている。
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