「暴君が生まれる根源は他にはない。彼が最初に現れるとき、それは人々の守護者としてである」

プラトン
プラトンの名言
  • 紀元前427年~紀元前347年
  • 古代ギリシアのアテナイ(アテネ)出身
  • 哲学者、学者、アカデメイア(アカデミー)の創設者
  • ソクラテスの弟子で著作に『国家』や『饗宴』などがあり、イデア論や哲人政治などの概念で西洋哲学に大きな影響を与えた

英文

”This and no other is the root from which a tyrant springs; when he first appears he is a protector.”

日本語訳

「暴君が生まれる根源は他にはない。彼が最初に現れるとき、それは人々の守護者としてである」

解説

この名言は、暴君が権力を握る過程を警告するものであり、最初は民衆の保護者として登場するが、やがて支配者として本性を現すという洞察を示している。プラトンは、暴君が権力を得る際に人々の信頼を得るために保護者のように振る舞い、外部の脅威や内部の不安に対処することで民衆の支持を集めることを指摘している。しかし、権力を握った後は、次第にその権力を濫用し、抑圧的な支配者へと変貌する。この言葉は、権力の危険性と、権力者がどのようにして支配を正当化するかを警告するメッセージである。

この現象は歴史を通じて繰り返されてきた。多くの独裁者や暴君が、混乱した社会や不安定な状況を利用して「保護者」として登場し、民衆の期待を背負って権力を手に入れる例が数多く存在する。たとえば、戦争や経済危機の際に、民衆が安心と秩序を求めて強力なリーダーを受け入れることがある。しかし、権力を握った後、そのリーダーは個人の自由を制限し、反対意見を抑圧し始めることが多い。暴君は最初は救済者のように見えるが、実際には権力を握るための策略を用いることがある

この名言は、現代の政治にも当てはまる。人々はしばしば、問題を解決してくれる強力なリーダーを求めるが、そのリーダーが真に民主的であるか、あるいは自己利益を追求する独裁者になるかを見極めることは難しい。プラトンの言葉は、民衆がリーダーを選ぶ際に慎重であるべきだという警告でもある。権力は絶対的になると腐敗しやすく、リーダーがどのような動機で行動しているのかを常に監視することが必要だ。リーダーの行動が初期の約束から逸脱し始めたとき、それが暴君への変貌の兆候かもしれない

この名言は、権力の本質とそれに伴う倫理的な課題を浮き彫りにする。権力は人々を守るための手段として使われるべきだが、それが自己中心的な目的に使われると、民衆にとって脅威となる。たとえば、政府が国家の安全を理由に監視体制を強化し、個人の自由を制限することは、一見正当な行為に見えるが、長期的には権力の濫用に繋がる可能性がある。権力者が最初にどのように現れ、どのように行動するかを注意深く観察することで、暴君の出現を防ぐことができるかもしれない。権力は慎重に監視され、制限されるべきものである

また、この名言は、個人の責任と市民の役割についても考えさせる。民主主義社会では、国民はリーダーに権力を与える責任を持つが、その権力が悪用されないように監視する役割も担っている。暴君が生まれるのは、民衆がリーダーを無条件に信じてしまうときであり、批判的思考を失うことが危険である。市民は常に権力者に対して質問をし、その行動を評価することで、権力の濫用を防ぐことができる。市民の参加と監視が、暴君の出現を防ぐ鍵となる

結局のところ、プラトンはこの名言を通じて、暴君がどのようにして権力を獲得し、その後に支配を強化していくかを警告している。権力は最初は正当な目的のために使われるかもしれないが、それがどのように変化するかを注意深く見守ることが重要である。権力に対する批判的な視点と監視は、自由と正義を守るために不可欠な要素であるというこの教えは、現代の政治においても深い意味を持つ。

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