「世界には精神も物質も単独では存在しない。宇宙の素材は精神‐物質である。人間という分子を生み出したのは、このほかのいかなる実体でもあり得なかった」

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
  • 1881年5月1日~1955年4月10日(73歳没)
  • フランス出身
  • イエズス会士、神学者、古生物学者、哲学者

英文

“There is neither spirit nor matter in the world. The stuff of the universe is spirit-matter. No other substance but this could have produced the human molecule.”

日本語訳

「世界には精神も物質も単独では存在しない。宇宙の素材は精神‐物質である。人間という分子を生み出したのは、このほかのいかなる実体でもあり得なかった」

解説

この言葉は、テイヤール・ド・シャルダンの独自の存在論を表している。彼は精神と物質を対立させるのではなく、両者が一体となった「精神‐物質(spirit-matter)」こそが宇宙の根本的な素材であると考えた。人間が物質的存在であると同時に精神的存在でもあるのは、この二元を超えた基盤に由来するという発想である。

背景には、科学と信仰の統合を目指した彼の思想がある。近代以降の哲学や科学は精神と物質を分離して扱ってきたが、シャルダンは進化の全体性を重視し、宇宙の根本には精神と物質の不可分の結合があるとした。そこから人間が誕生したことは、偶然ではなく宇宙の本質的傾向の現れと理解された。

現代的に考えると、この言葉は量子論やシステム論の文脈とも響き合う。物質と情報、物理的実体と意識の関係をどう捉えるかは依然として大きな課題である。シャルダンの「精神‐物質」という概念は、人間存在を宇宙の全体性の中に位置づける試みとして、今もなお示唆的な価値を持っている。

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