「地上的存在は、より自律的となり、心理的に豊かになるにつれて、互いに対してある種の閉ざされた状態となり、同時に徐々に宇宙的環境や流れからも疎遠となり、互いに不可解で、自己を外に表すことができなくなっていくように思われる」

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
  • 1881年5月1日~1955年4月10日(73歳没)
  • フランス出身
  • イエズス会士、神学者、古生物学者、哲学者

英文

“It seems to me that terrestrial beings, as they become more autonomous, psychologically richer, shut themselves up in a way against one another, and at the same time gradually become strangers to the cosmic environment and currents, impenetrable to one another, and incapable of exteriorizing themselves.”

日本語訳

「地上的存在は、より自律的となり、心理的に豊かになるにつれて、互いに対してある種の閉ざされた状態となり、同時に徐々に宇宙的環境や流れからも疎遠となり、互いに不可解で、自己を外に表すことができなくなっていくように思われる」

解説

この名言は、人間や地上の存在が進化の過程で抱える孤立と断絶の問題を表している。自律性や心理的複雑さを増すことは、個体の発展にとって重要だが、その一方で他者との関係や宇宙的つながりを見失う危険を孕む。テイヤール・ド・シャルダンは、精神的成長が必ずしも共同性や外部との調和を伴わない点に警鐘を鳴らしている。

彼の思想の背景には、進化を「結合と統合」の過程とみなす見解がある。本来、進化は意識の高度化とともに存在同士の結びつきを深めるはずである。しかし現実には、内面の豊かさが逆に分断を生むことがある。人間社会の孤立や疎外感は、その典型的な表れであり、精神の発展と宇宙的連帯との乖離という矛盾が生じている。

現代的に解釈すれば、この指摘はデジタル社会や都市生活における孤独の問題と重なる。情報や技術によって個人の自由は増したが、人々は互いに閉ざされ、つながりを失いつつある。また、人類が自然や宇宙のリズムから遠ざかることで、環境危機や精神的疎外が拡大している。この名言は、精神的自律と宇宙的調和をいかに両立させるかという、今日にも通じる課題を鋭く浮き彫りにしている。

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