「奇妙なことである。あらゆる科学の中心であり創造者である人間こそが、科学がいまだ宇宙の一様な表象に組み込むことに成功していない唯一の対象である。我々は彼の骨の歴史を知っているが、その**反省的知性**のための秩序ある場所はいまだ自然の中に見いだされていない」

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
  • 1881年5月1日~1955年4月10日(73歳没)
  • フランス出身
  • イエズス会士、神学者、古生物学者、哲学者

英文

“It is a curious thing: man, the centre and creator of all science, is the only object which our science has not yet succeeded in including in a homogeneous representation of the universe. We know the history of his bones, but no ordered place has yet been found in nature for his reflective intelligence.”

日本語訳

「奇妙なことである。あらゆる科学の中心であり創造者である人間こそが、科学がいまだ宇宙の一様な表象に組み込むことに成功していない唯一の対象である。我々は彼の骨の歴史を知っているが、その**反省的知性**のための秩序ある場所はいまだ自然の中に見いだされていない」

解説

この名言は、人間の知性の特異性と、それを自然の枠組みに位置づけることの困難さを指摘している。人間は科学を生み出し、宇宙の構造を解明しつつあるが、科学自身は人間の意識や思考を体系的に説明することに未だ至っていない。テイヤール・ド・シャルダンはここで、科学の限界と人間精神の超越性を問題提起している。

彼の思想の背景には、進化の過程における意識の飛躍的な重要性がある。骨や化石の歴史は自然科学によって追跡できるが、「反省的知性」、すなわち自己を意識し宇宙を解釈する能力は、単なる物質的説明には収まりきらない。これを無視すれば、人間は自然界の中で孤立し、進化の最終段階である「精神的進化」の意義が失われることになる。

現代的に言えば、この言葉は脳科学と意識研究の課題を予見している。神経回路や遺伝子は解明されつつあるが、「意識のなぜ」という根本問題には答えが出ていない。テイヤールの視点は、人間の存在を科学的にだけでなく精神的・哲学的に統合する必要を強調し、科学と人間学をつなぐ課題を今も突きつけているのである。

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