「宇宙の根源的な実質の奥底には、自らを秩序づけ、自らを内に巻き込む固有の根源的傾向が存在する」

• 1881年5月1日～1955年4月10日（73歳没）
• フランス出身
• イエズス会士、神学者、古生物学者、哲学者

英文

“Deep down, there is in the substance of the cosmos a primordial disposition, sui generis, for self-arrangement and self-involution.”

日本語訳

「宇宙の根源的な実質の奥底には、自らを秩序づけ、自らを内に巻き込む固有の根源的傾向が存在する」

解説

この言葉は、テイヤール・ド・シャルダンが抱いた宇宙の自己組織化の原理を示している。彼は宇宙を単なる無秩序な物質の集合とは見なさず、内的に秩序を生み出す力を宿した動的存在として捉えた。「sui generis（固有の）」という表現は、他の何にも還元できない独自の性質を強調している。

背景として、20世紀初頭の科学は物理学や生物学の分野で急速に発展し、進化や複雑系の理解が進みつつあった。シャルダンは進化を外的な要因によるものだけではなく、宇宙そのものに内在する創発的傾向として理解しようとした。ここでの「自己秩序化」や「内的巻き込み」は、後に現代科学が「自己組織化」や「複雑系の進化」として論じるテーマを先取りしているとも言える。

現代的視点では、この言葉は宇宙論やシステム論にもつながる。銀河の形成から生命の誕生、そして意識の出現に至るまで、宇宙は自己組織化の連続的プロセスを示している。テイヤールの思想は、こうした現象を単なる偶然ではなく、宇宙の根源的傾向として把握するものであり、人間存在もその大きな流れの一部であることを示唆しているのである。

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