「コンピュータでの執筆は、書いたものをあまりにも簡単に保存できてしまう。気取った書き出しの一文も、捨てられずに残ってしまう。紙くずに囲まれて座る代わりに、コンピュータ上の作家は、自らの誤りをきれいにデジタルメモリに保管しているのだ」

P・J・オローク(画像はイメージです)
P・J・オローク(画像はイメージです)
  • 1947年11月14日~2022年2月15日(74歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 政治風刺作家、ジャーナリスト、ユーモリスト

英文

“Writing on a computer makes saving what’s been written too easy. Pretentious lead sentences are kept, not tossed. Instead of sitting surrounded by crumpled paper, the computerized writer has his mistakes neatly stored in digital memory.”

日本語訳

「コンピュータでの執筆は、書いたものをあまりにも簡単に保存できてしまう。気取った書き出しの一文も、捨てられずに残ってしまう。紙くずに囲まれて座る代わりに、コンピュータ上の作家は、自らの誤りをきれいにデジタルメモリに保管しているのだ」

解説

この名言は、デジタル技術がもたらした創作環境の変化と、その創造性への影響についての鋭い観察である。P・J・オロークは、コンピュータによって執筆作業が効率化された反面、書き手の自己検閲や推敲のプロセスが甘くなったことを批判している。特に「pretentious lead sentences(気取った書き出しの一文)」という表現は、文体だけ立派に見せかけて中身が伴わない文章が温存されやすい現状を皮肉っている。

従来、物理的な紙に書く行為には、書き直しの手間や視覚的な失敗の蓄積が伴い、それが創作上のフィルターとして機能していた。ところがデジタルでは、「保存」や「元に戻す」が容易であるがゆえに、推敲や削除の心理的ハードルが下がり、かえって粗雑な文章が蓄積されてしまうという逆説的な問題が生まれる。

この名言は、利便性が創造性を損なう場合があるという逆説を、ユーモアと洞察で語っている。執筆や思考が「手を動かす」行為であった時代と、記録が自動的に残ってしまうデジタル時代との対比によって、人間の創作行動とテクノロジーの関係性を浮き彫りにしている。「簡単さ」が思考を浅くすることへの警鐘とも言える、知的で皮肉な一言である。

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